第9回:医師免許でコーヒー屋に?「食品衛生管理者」の免除と、その裏にある責任。

創業の軌跡

「実は、私は医師です」

第一回で「国家試験の勉強をしていた」と書きましたが、その正体は医師国家試験でした。

これまで伏せてきましたが、私は現在、外科医として病院に勤務しています。今回は、そんな私が「コーヒー屋の店主」として避けては通れない、食品衛生管理者のお話をします。


「食品衛生管理者」とは何か?

食べ物を扱う事業を始める際、必ず「食の安全を守る責任者」を決めなければなりません。

一般的には、調理師や栄養士の資格を持っている人、あるいは保健所が実施する「食品衛生責任者」の講習(通常1日)を受けた人がその役割を担います。コーヒー豆を焙煎・販売するにあたっても、お客様の口に入るものを作る以上、この「衛生の砦」となる存在は不可欠です。

医師という「特権」と、その裏にある学び

実は、日本の法律(食品衛生法)では、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師などは、無条件で「食品衛生管理者」および「食品衛生責任者」の資格要件を満たすと定められています。

つまり、追加の試験や講習を受けることなく、免許証一つで届け出が可能なのです。

これだけ聞くと「楽をして資格が取れていいな」と思われるかもしれません。しかし、これは決して特権を与えられているわけではありません。医学部の6年間で、私たちは微生物学、公衆衛生学、病理学といった、食中毒や感染症のリスク管理に直結する学問を徹底的に叩き込まれます。

「国が認めるほど、食の安全に関する基礎知識を習得している」という、重い責任を背負っている証でもあるのです。

手術室の基準を、作業場に

なぜ私が、すでに資格があるにもかかわらず「衛生」を一つのテーマとして深掘りするのか。それは、私が「外科医」だからです。

外科医の日常は、徹底した衛生管理の中にあります。

  • 診察時、手術前に行う手洗い
  • 滅菌されたガウンと手袋の着用
  • 「清潔」と「不潔」を分ける意識

我々は、院内での感染を広げないよう、また創部感染を引き起こさないよう毎日細心の注意を払っています。病室や手術室でのわずかな不注意は、患者さんの命に直結します。この「衛生観念」は、コーヒー作りにおいても全く同じだと私は考えています。

「 Your First COFFEE 」が届ける一杯は、ただ美味しいだけでなく、医療現場と同等の基準で安全が守られたものでありたい。外科医として、そして一人の店主として、そこには一切の妥協をしたくないのです。

次回予告:保健所への営業届出

資格はあっても、勝手に売っていいわけではありません。次は、いよいよ行政の窓口へ。 「保健所への営業届出」のリアルについてお話しします。保健所では具体的にどのような手続きを踏めばいいのか、その実際をお届けします。

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