第11回:プロのアドバイスをあえて不採用にした理由。コーヒー屋開業で譲れなかった「購入の動線」

創業の軌跡

保健所への営業届出を済ませ、ハードルを一つ超えた私が次に取り組んだのは、「事業計画書」の作成です 。

「こんなコーヒーを届けたい」という理想を、客観的に見つめ直し、誰が見ても納得できる形に整理したい 。そんな目的を持って、私は机に向かいました 

今回は、私が実際に作成した計画書の内容と、中小機構(中小企業基盤整備機構)の専門家との間で交わされた、リアルなブラッシュアップの舞台裏をお話しします。

専門家のアドバイス:採用した「価格のハードル」

当初、私が考えていた看板商品は、3つの味わいを段階的に試せる「ディップコーヒーのテイスティングセット(6袋+カード、2,000円)」でした 

しかし、計画書を見た中小機構の専門家から、このような指摘を受けました。

「ターゲットはコーヒー初心者や苦手な人ですよね。だとすれば、最初から2,000円を出すのは少し心理的ハードルが高いかもしれません。まずは1,000円以内で気軽に試せる選択肢を作ってみては?」

この指摘には非常に納得がいきました。 そこで計画を変更し、「3個入りにして1,000円程度で買えるスターターセット」をメインの商品にすることにしたのです。客観的な視点を入れることで、顧客目線の「入り口」をより低く、親切に設計し直すことができました 。

専門家のアドバイス:あえて不採用にした「おすすめ診断」

一方で、専門家からの提案をあえて採用しなかったケースもあります。それが、商品の買い方に関する提案でした。

専門家からは、次のようなアイデアをいただきました。

「3種類のセットで飲み比べをさせるのではなく、ネット上で簡単な『おすすめ診断』をしてもらい、その人に最適だと診断された1種類だけを3個入りで買ってもらう形にした方が、初心者迷わなくていいのでは?」

一見、初心者思いの合理的な提案に思えます。しかし、私は少し違う見方をしました。

  • 購入までの「迷い」が離脱を生む:ECサイトにおいて、カートに入れる前に「診断」という考えるステップを挟むと、そこで面倒になって離脱してしまう(購入に至らない)人が確実に増えます。
  • 「体験」を届けるためのセット: 「 Your First COFFEE 」が届けたいのは、単に1杯のコーヒーではありません。「苦くて飲めない」と思っていた人が、フルーティーな豆に出会い、自分の好みが分かっていくという「成功体験」そのものです 。

そのため、診断で1種を絞り込ませるのではなく、やはり「いくつかのタイプを段階的に試せるセット」を主軸にするべきだと判断しました 

プロの意見をすべて鵜呑みにするのではなく、「自分のブランドが提供したい本質的な価値は何か」という軸に照らし合わせて取捨選択する。このプロセスこそが、計画書の解像度を上げてくれました。

理想を客観視するための「数字のカルテ」

専門家とのディスカッションと並行して、売上や経費のシミュレーションを重ねました 

仕入高や販売サイトの手数料、発送にかかる送料や資材代まで、細かく数字を弾いていく作業は 、自分の頭の中の熱量を、冷徹なデータへと翻訳していくような感覚でした。

さて、詳細な事業計画ができましたが、これではまだ机上の空論にすぎません。次回以降は実際にコーヒー屋を作るのに必要な豆の仕入れ、デザイン、梱包、ネットショップの開設などについて綴っていきます。

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